電験三種合格後、さらなるステップアップのために電験二種を挑戦する方は多いのではないでしょうか?
電験二種の難易度は電験三種に比べると相当高いと感じられますが、電験二種一次試験に関しては出題傾向やポイントを押さえておけば、思っているほどハードルは高くないと言えます。
電験二種一次試験突破に向けての攻略ポイントについて、自身の経験を元に解説をしていきます。
電験二種一次試験について
令和5年度第一種・第二種電気主任技術者試験受験案内(引用元:受験申込方法・受験案内 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター)の内容を元に解説致します。
【理論】
A問題:4問×15点=60点(小問:各3点)
B問題:3問×10点=30点(小問:各2点)
計7問の出題です。(配点計:90点)
1問につき、5つの空欄に対して15ある選択肢から正答を選ぶ択一形式です。
B問題のうち問7、問8は選択問題となっており、2問のうちのどちらか1問を回答します。
90点満点中54点(6割)取れれば合格です。
年度により合格最低点が54点を下回る場合があります。
試験時間は90分です。(通常は、09:15~10:45)
- 電磁気(静電気、磁気)
- 電気回路(直流、交流、直流過渡現象)
- 電子回路(トランジスタの増幅回路、オペアンプなど)
- 電気電子計測
※知識問題は極めて少なく、殆どが計算問題となります。(ただし電卓を必要とする計算問題は多くはありません)
【電力】
A問題:4問×15点=60点(小問:各3点)
B問題:3問×10点=30点(小問:各2点)
計7問の出題です。(配点計:90点)
1問につき、5つの空欄に対して15ある選択肢から正答を選ぶ択一形式です。
【理論】【機械】科目のように、B問題での選択問題はありません。(すべての問題が必須問題です)
90点満点中54点(6割)取れれば合格です。
年度により合格最低点が54点を下回る場合があります。
試験時間は90分です。(通常は、11:25~午後0:55)
- 発電(水力・火力・原子力・新エネルギー)
- 変電(変電所の設備、変圧器の結線)
- 送電(送電線路、電線のたるみ、中性点接地方式、地中送電)
- 配電(線路電圧降下、配電方式、配電設備)
※一部、計算問題が出題される場合もありますが、空欄穴埋め問題が殆どです。(電卓を必要とする計算問題はまず出題されません。)
【機械】
A問題:4問×15点=60点(小問:各3点)
B問題:3問×10点=30点(小問:各2点)
計7問の出題です。(配点計:90点)
1問につき、5つの空欄に対して15ある選択肢から正答を選ぶ択一形式です。
B問題のうち問7、問8は選択問題となっており、2問のうちのどちらか1問を回答します。
90点満点中54点(6割)取れれば合格です。
年度により合格最低点が54点を下回る場合があります。
試験時間は90分です。(通常は、午後2:15~午後3:45)
※一部、計算問題が出題される場合もありますが、空欄穴埋め問題が殆どです。(電卓を必要とする計算問題はまず出題されません。)
- 回転機(直流機、誘導機、同期機)
- 変圧器
- パワーエレクトロニクス(半導体素子、整流回路、チョッパ回路、インバーター)
- 電気エネルギー利用(電動機応用、照明、電熱、電気化学)
- 自動制御
- 情報
【法規】
A問題:4問×15点=60点(小問:各3点)
B問題:3問×10点=30点(小問:各2点)
計7問の出題です。(配点計:90点)
1問につき、5つの空欄に対して15ある選択肢から正答を選ぶ択一形式です。
【理論】【機械】科目のように、B問題での選択問題はありません。(すべての問題が必須問題です)
90点満点中54点(6割)取れれば合格です。
年度により合格最低点が54点を下回る場合があります。
試験時間は65分です。(通常は、午後4:25~午後5:30)
※【理論】、【電力】、【機械】科目は90分の試験時間に対し、【法規】科目だけ65分となり、25分短い試験時間となります。
- 電気事業法
- 電気工事士法
- 電気用品安全法
- 電気設備技術基準およびその解釈
- 施設管理
※ほぼ100%空欄穴埋め問題です。
電験二種一次試験の合格の壁は思っているほど高くない
理由について下記に説明を致します。
電験三種に比べて大問の数が少ない
上述のように、電験二種一次試験は各課目とも大問7問の出題形式です。
電験三種が大問17問が出題され、合計20問に解答するのに対し半分以下の問題数です。
すなわち、全ての範囲からまんべんなく出題される電験三種に比べ、電験二種一次試験はある程度範囲が限定されて出題されると言えます。
試験に向けた対策として『ヤマを張る』ことはリスクがあり、決しておススメできる手法ではありませんが、電験二種一次試験においては過去数年間の出題傾向より、今回は出そうかどうか、ある程度予想ができるのが特徴と言えます。
例を挙げると、
各科目とも、ある程度出題分野が限定されている傾向にあると言えます。
各大問につき小問×5問の構成となっている為、得意分野であれば小問5問全て完答も十分狙う事が出来ます。
選択肢が2~3択に絞り込むことが出来る
電験三種はすべての問題について、5肢択一の選択問題です。
一方で、電験二種一次試験は各問に対し、5つの空欄に対して15ある選択肢から正答を選ぶ択一形式です。
15もある選択肢から正答を正しく選択するのは困難に感じますが、【理論】科目を除く【電力】、【機械】、【法規】科目においては、実際は文脈や文章の前後関係より2~3択に絞り込めるケースが殆どです。
また、引っ掛け問題として、紛らわしい用語がいくつも並んでいるケースもありますが、(経験上)こういった場合、これまで聞いたことが無いような選択肢は最初から除外してしまっても問題無いと考えます。
試験中に『あれ!?これって、どっちやったっけ?』とあれやこれやとあたふた悩むよりも、直感で選んだ方が正答を選ぶ確率は高いと言えるでしょう。
殆ど出題されない分野がある
過去、H21年(2009年)~R03年(2021年)までの過去問の出題分野をまとめた結果、以下の分野については出題がされていません。
電験三種でおなじみであった分野においても、電験二種一次試験では出題頻度が低いものが見られます。
出題されやすい分野、されにくい分野をある程度押さえておけば、電験三種、二種一次試験同時受験でも両方共に合格点を取ることは十分に可能と考えます。
【電力】、【機械】、【法規】科目では(電卓が必要となる)計算問題が殆ど出ない
電験二種一次試験についてに記載の通り、【電力】、【機械】、【法規】では電卓を必要とする計算問題はまず出題されません。
【理論】についても、計算問題の大半は選択肢にある数式を選ぶ問題が殆どであり、電験三種のように\( \sqrt{3}=1.7320508 \dots \)とか、\( \pi=3.141592 \dots \)といった値を打ち込んで計算するシーンはほぼ皆無です。
有効数字の桁取りや電卓のキーの押間違いを気にする必要はありません。
計算問題に関しては、圧倒的に電験二種一次試験の方が簡単と言えるでしょう。
電験二種一次試験における注意点
マニアックな出題
あくまで私見である部分もありますが、【電力】、【法規】科目については、(素人目線で見て)かなりマニアックな出題が多いと感じています。
例えば、過去問において以下のような出題がされています。
- 【電力】R02年 問4…都市型装柱における設備について
- 【法規】R01年 問1…高圧一括受電マンションにおける需要設備の保安管理業務について
- 【電力】H26年 問3…四端子回路定数について
このような分野は職種上、日頃から電気設備に身近に触れている業界の人や、電気機器の専門家でないとかなり解答に戸惑ってしまうのではないでしょうか???
過去問で見たことない!と言っても得点が上乗せされたりする訳では無いので、過去問だけに頼らない方法による知識の向上も必要と言えるでしょう。
また、日ごろより他の資格試験の過去問を解いてみたり、電気設備に関する専門書等に触れることも必要だと言えます。
紛らわしい選択肢
R03年度試験では【電力】問6で『変電所の調相設備』についての問題が出題されました。
小問の(1)、(2)において進相・遅相の無効電力を供給・消費する設備についての問題ですが、私自身も受験し見事に間違ってしまいました…
本来であれば、きちんとよく考えれば正答を得る事はそれほど難しくないはずなのですが、試験会場独特の雰囲気であったり、残り時間がを気になったりして、自信を持って選択した解答が後から見直すと間違っていたというパターンも十分に起こり得ます。
紛らわしい選択肢でも確実に正答を選ぶためには、過去問をはじめとして日ごろより多くの試験問題に触れる機会を持つとともに、試験問題における各分野に対する理解をしっかりと深める事が重要と言えるでしょう。
【理論】科目は本質の理解が必要
電験二種一次試験の【理論】科目は、他の科目に比べると最も鬼門と言って良いでしょう。
電験三種では何となく公式を覚えていればそれなりに解答できていたとしても、電験二種一次試験に向けては内容について本質の理解が求められます。
特に、
- 電磁気(静電気、磁気)
- 直流回路
- 直流過渡現象
からの出題は頻出であり、内容を十分に理解する必要があります。
- 電磁気(静電気、磁気)…ガウスの法則、ビオ・サバ―ルの法則、マクスウェル方程式
- 直流回路…キルヒホッフの法則、重ね合わせの理、テブナンの定理などの基本理論の理解
- 直流過渡現象…回路方程式を立式し、微分方程式やラプラス変換による式の導出
これらについてはしっかりと理解しておくことが望ましいと言えます。
数学の知識も求められるため、かなりハードルが高いと感じる部分もありますが、過去問だけでなく、専門書などによる学習も効果的と考えます。
まとめ
- 電験三種と比較における電験二種一次試験について
- 電験三種に比べて大問が数が少ない
- 選択肢が2~3択に絞り込むことが出来る
- 殆ど出題されない分野がある
- 【電力】、【機械】、【法規】科目では(電卓が必要となる)計算問題が殆ど出ない
- 電験二種一次試験における注意点
- マニアックな出題
- 紛らわしい選択肢
- 【理論】科目は本質の理解が必要
今回はここまでとさせて頂きます。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。