電験三種(第三種電気主任技術者試験)の【法規】科目は、他の【理論】、【電力】、【機械】に比べて少し異質な感じを持っている方も多いのではないでしょうか?
【法規】科目では、【法規】というだけあって法律(電気事業法、電気工事士法、電気用品安全法、電気設備技術基準およびその解釈について)に関する問題が多く出題されます。
とにかく、覚える用語や数字が非常に多いです。
私自身も、電験の科目で最も苦手なのは間違いなく【法規】です。
2019年に電験三種合格時は、(お恥ずかしい限りですが…)自己採点:57点で、得点調整に辛うじて救われました(汗)
また【法規】科目ならではの問題点として、電気事業法をはじめとする『法律』が法改正により予告なく変更されるという事があげられます。
古い参考書の過去問を丸暗記していると、最新の法律では条文が改正されていたため、正答が変わってしまっていた…なんていった事もしばしばです。
【法規】科目は年度によって法令が変わることにより出題内容が変わる可能性があり、試験に向けた対策が取りにくい科目といえるでしょう。
さらには、ここ最近、
- 自然エネルギーを用いた新エネルギー、再生可能エネルギーが話題となっていたり・・・
- 2016年の電力小売りの完全自由化に伴い、電力の供給の形が変わったり・・・
- 夏場の猛暑や、地震などによる発電所停止に伴い電力需要がひっ迫し、電力需給のバランスを取るためのデマンドレスポンスがが求められたり・・・
等により、昔の過去問ではあまり見られなかったような分野からも多く出題されるようになってきています。
本記事ではこのような課題も踏まえて、【法規】科目をいかにして攻略するかについて、まとめていきたいと思います。
電験三種【法規】ってどんな問題が出るの?
A問題:10問
B問題:3問(×小問各2問)=6問
計16問の出題です。
【電力】科目と同様に、B問題での選択問題はありません。(すべての問題が必須問題です)
A問題は1問あたり6点
B問題は、問11、12は13点(小問 (a):6点、(b):7点)
問13は14点(小問 (a):7点、(b):7点)の100点満点です。
5つの選択肢から正答を1つだけ選ぶ五肢択一形式です。
100点満点中60点(6割)取れれば合格です。
年度により合格最低点が60点を下回る場合があります。
試験時間は65分です。(通常は、午後4:25~午後5:30)
※【理論】、【電力】、【機械】科目は90分の試験時間に対し、【法規】科目だけ65分となり、25分短い試験時間となります。
- 電気事業法
- 電気工事士法
- 電気用品安全法
- 電気設備技術基準およびその解釈
- 施設管理
知識問題と計算問題の比率は6:4~7:3程度です。
とにかく、膨大に広い分野に対し覚えなければいけない非常項目が多いです。
他の【理論】、【電力】、【機械】科目と異なり、1問あたりの配点が高く(6~7点)、また問題数も少ないため試験時間も短いです。
ここ最近は、新エネルギーや分散型電源の系統連系、デマンドレスポンスなど新しい分野からの出題も増えてきています。
電験三種【法規】って何で難しいの?
電験三種【法規】の難しいところは、以下に挙げる点だと思います。
- 法律が覚えづらく、設問に対する正解の回答を見ても、なぜそうなるのかがわかりづらい
- 他の科目に比べて試験問題数が少なく、1問あたりの配点が大きいため、少しのミスが致命傷になりかねない。
- 法律の改正や時代のトレンドの変化などに伴い出題内容が大きく変わる事があり、過去問の丸暗記が通用しない。
法律が覚えづらい
電験三種【法規】科目は、覚えるべき用語や数字が非常に多いです。
また、設問に対する正解の解答を見ても、なぜそうなるかがわかりづらいです。
過去問を例に見てみましょう。
平成25年度 三種 法規 過去問より
問1 次のa,b及びcの文章は,主任技術者に関する記述である。
その記述内容として,「電気事業法」に基づき,適切なものと不適切なものの組合せについて,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
a.電気事業の用に供する電気工作物を設置する者は,電気事業の用に供する電気工作物の工事,維持及び運用に関する保安の監督をさせるため,経済産業省令で定めるところにより,主任技術者免状の交付を受けている者のうちから,主任技術者を選任しなければならない。
b.主任技術者は,事業用電気工作物の工事,維持及び運用に関する保安の監督の職務を誠実に行わなければならない。
c.事業用電気工作物の工事,維持又は運用に従事する者は,主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない。
\begin{array}{cccc} \hline & \mathrm {a} & \mathrm {b} & \mathrm {c} \\
引用元:一般財団法人 電気技術者試験センター 第三種電気主任技術者試験の問題と解答 【問題】平成25年度第三種電気主任技術者試験 法規科目 より
\hline
(1) & 不適切 & 適 切 & 適 切\\
\hline
(2) & 不適切 & 不適切 & 適 切\\
\hline
(3) & 適 切 & 不適切 & 不適切\\
\hline
(4) & 適 切 & 適 切 & 適 切\\
\hline
(5) & 適 切 & 適 切 & 不適切\\
\hline
\end{array}
電気事業法
第三章 電気工作物
第二節 事業用電気工作物
第二款 自主的な保安
第四十三条(主任技術者)
- 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、主務省令で定めるところにより、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならない。
- 自家用電気工作物を設置する者は、前項の規定にかかわらず、主務大臣の許可を受けて、主任技術者免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任することができる。
- 事業用電気工作物を設置する者は、主任技術者を選任したとき(前項の許可を受けて選任した場合を除く。)は、遅滞なく、その旨を主務大臣に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
- 主任技術者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の職務を誠実に行わなければならない。
- 事業用電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者は、主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない。
出展:e-Gov法令検索
従って、条文に書かれてある通り、問1の【正解】は(4) となります。
このように、法規の問題については、参考書などで過去問の解説を見ても『法律の条文に書かれてる通りです』としか書かれておらず、なぜそうなるかが理解辛いことが難しいとされる原因の一つになっていると考えます。
電験三種【法規】科目の出題は、電気事業法に基づいて制定されている『電気設備技術基準』、および『電気設備技術基準の解釈』からの出題が頻出ですが、その内容や範囲は非常に広く膨大となっております。
市販の書籍において1冊にまとめられてたものが毎年出版されており、旧版からの変更点や最新の条文についてまとめられています。
実際に書店で手に取ってもらえるとわかりますが、『電気設備技術基準』および『電気設備技術基準の解釈』の書籍はかなりのボリュームがあり、すべて覚えようとするのは相当大変です。
試験問題数が少なく1問あたりの配点が大きい
出題形式にも書いてありますが、【法規】科目は他の科目に比べて問題数が少なく、1問あたりの配点が大きいです。
A問題(60点満点)
- 問1~問10:10問×6点=60点満点
B問題(40点満点)
- 問11:(a)6点+(b)7点=13点
- 問12:(a)6点+(b)7点=13点
- 問13:(a)7点+(b)7点=14点
合計:100点満点
合計16問であるため、1問の正否が合格に大きく影響します。(他の科目は合計20問)
5択のうち2択まで絞り込んで、えいやっ!で決めた解答が間違っていたら、それこそショックですよね(汗)。
法規の問題については、点数の取りこぼしが無いよう、解答できる問題は確実に取っていく必要があります。
過去問の丸暗記が通用しない
ここ数年、新エネルギー、再生エネルギーのトレンドや、電力自由化、電力需給のデマンドレスポンスなど、過去殆ど見る事のなかった分野からの出題が目立っています。
ここ5年程度の過去問を見てみても、
- H29 問10 再生可能エネルギーの建設計画(自然エネルギー利用)
- H30 問10 ネガワット取引の概要(スマートグリッド)
- R01 問1 電力小売り供給について(電力自由化)
- R01 問9 分散型電源の系統連系設備(再生可能エネルギー、電力自由化)
などといったように、時代のトレンドに合った分野から出題されています。
【法規】科目への対策としては、つねに最新の社会動向にも目を向ける必要があると言えます。
電験三種【法規】攻略に向けた勉強法について
キーワードは塊(かたまり)で覚える
先ほどの、電気事業法におけ第四十三条(主任技術者)に関する条文を例に見てみましょう。
条文を丸覚えするのは非常に大変ですが、試験に出題される傾向が大きいキーワードはおおむね限定されています。
#設置者、#従事者、#保安、#規定、#工事、#監督、#遅延無く、#届け出、#維持、#運用、#指示、#選任、#自主検査、#記録の保存、#主務大臣、#50kV(三種)、#5000kW(三種発電所)、#170kV(二種)、#7000V(外部委託)
などなど。。。
電気主任技術者に関連する設問に対しては、これらのキーワードを元に正答を正確に選択することが求められます。
正答となる選択肢の用語は、ほぼほぼ決まった単語しか出て来ません。
その一方で、誤答となる選択肢の中には含まれていないキーワードである、
『所有者』とか、『事前に』とか、『産業保安監督部長』などが入っていることが多く、受験者を混乱させるような形で出題されるケースが多いです。
知識問題攻略のポイントとしては、これら誤答になってしまうキーワードを確実に除外し、正答を確実に導く事が重要です。
その為には条文を丸覚えするのではなく、キーワードを塊(かたまり)として覚えてやることが効果的です。
いわゆる、タグクラウド(ワードクラウド)のイメージですね。
選択肢の中に、これまで聞いたことがないような言葉が入ってる場合は、最初から思い切って除外してやるのも良いでしょう。
それによって、選択肢の絞り込みもより容易にすることが出来るのではないでしょうか?
知識問題に関する選択はテンポ良く!
【法規】科目における知識問題は、まず日本語の設問を読んで正しく理解することから始めなければなりません。
【法規】科目は試験時間は65分しかなく、他の科目に比べて短いため、問題文を読むことに対しても非常にスピードが求められます。
時間との勝負となる中で、
- 5択中で2択まで絞ってさんざん迷った挙句、結局間違った方を選択してしまった
- 悩めば悩むほど刻々と時間が過ぎて、結局慌てて違う方を選んでしまった。
といった方も多いことでしょう。
【法規】の知識問題攻略のポイントとして、“知識問題の選択はテンポ良く解答する”といった点が挙げられます。
- 問題文をサッと読んで、5択→2~3択に絞り込む
- なるべく考え込まずサクサクと読み進める。
- 聞いた事が無い単語や、馴染みのない単語が入っている選択肢は最初から除外する
これらを意識してやることにより、知識問題に対する得点力もおのずと上がっていき、苦手意識を克服できるのでは?と考えます。
【電力】科目と合わせて対策を行う
【法規】科目と【電力】科目は非常に関連性が高いです。
私が勝手に持ってるイメージですが、各科目の関連性はおおむねこのようになると考えています。
【電力】科目、【法規】科目はそれぞれ関連性が大きく、例えばそれぞれの出題分野において、類似した問題が出題されるケースが多く見られます。
例えば、
電力 | 法規 |
---|---|
電線のたるみの計算 | 架空電線施設時の強度計算 |
送電線の電圧降下の計算 | コンデンサ投入による力率改善 |
短絡電流計算 | 電気施設管理-保護協調 |
これらは各分野はそれぞれ計算問題で使用する公式も同じであり、また、出題内容もほぼ被っています。
過去問の出題例においては、【法規】の試験問題がそのまま【電力】に、(逆に【電力】の試験問題がそのまま【法規】に)出題されても全く不思議ではないいったケースもしばしばあります。
【法規】科目は【電力】科目との関連性が高く、合わせて対策を行うことにより、効率よく勉強を進める事が出来ると言えます。
計算問題を確実に取る
計算問題は、ほぼB問題から出されます。
B問題の配点は合計40点あり、ここでいかに高得点を稼ぐかがポイントになります。
仮に、B問題(6問)のうち5問取れれば、それだけで約30点分は確実に確保することが出来るため、合格点には残り30点(すなわちA問題5問~半分)で十分となります。
知識問題中心のA問題を半分取れればO.K.と考えると、多少気が楽に感じられるのではないでしょうか?
知識問題に関する選択はテンポ良く!進める事により、B問題の計算問題に充てる事ができる時間を多くすることが出来、得点アップに向けてより効果的と言えます。
B問題の計算問題はそれほど手怖くはありません。
特に電気施設管理の項目に対しては、
- 全日効率、負荷特性の計算(不等率、需要率、負荷率)
- コンデンサによる力率改善
- 短絡電流計算
などはパターン化されているケースが多く、正しく問題文を読んで理解できれば、ほぼ公式に当て嵌めれば回答出来る問題が多いです。
計算問題は一言、慣れが大きい部分がありますが、先ほどのように【電力】【法規】の計算問題を数多くこなすことにより、少しでも苦手意識をなくしていくことが重要です。
- キーワードはまとめて覚える
- 知識問題に関する選択はテンポ良く!
- 【電力】科目と合わせて対策を行う
- 計算問題を確実に取る
今回はここまでとさせて頂きます。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。