電験二種二次試験【機械・制御】科目は、【電力・管理】科目とは異なり、殆どが全てが計算問題での出題です。
(【機械・制御】科目からの【論説】問題での出題は、 [H30:問1] で『三相かご形誘導発電機の始動方法』で出題されている他は、ほぼ見られていません。)
また、大問4問のうち2問を選択する形式であり、試験時間は60分間です。
すなわち、大問2問を60分間(=30分間/1問あたり)で回答しなくてはなりません。
大問1問あたり複数の小問が設定されているケースが多く、しかも、いずれもの問題もかなりの計算量を要するものばかりです。
問題を読んでから解き方を考えていると、到底時間が足りません。
設問に対し、求めるべき値を見た瞬間に、与えられた物理量から必要な式が直ぐに思いつくくらいにならないと厳しいかもしれません。
とはいえ、王道ですが、過去問周回により繰り返し問題に慣れていくことによって、計算問題についてはおのずと理解出来るようになるはずです。
電験二種二次試験【機械・制御】科目において、【機械】分野にポイントを絞って、二次試験に向けての攻略法についてまとめてみました。
出題分野
電験二種二次試験【機械・制御】 科目の機械分野から出題される問題について、下記の問題集及び、試験の問題と解答 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センターのサイトを参考にして過去問の分析を行いました。
【機械・制御】科目における出題分野は、大きく以下の項目に分類されます。
- 直流機
- 誘導機
- 同期機
- 変圧器
- パワーエレクトロニクス(=パワエレ)
- (自動制御)⇒別の記事にて解説致します。
①~④までを、通称4機(器)と呼ばれており、ここでいかに得点を稼ぐかがポイントになります。
直流機
直流機については、電験三種【機械】科目での計算問題とほぼ同レベルの難易度です。
直流電動機の誘導起電力や電機子電流、トルク等を求める問題が出題されます。
年度によっては、パワエレと組み合わされる場合があり[H24:問1]、応用力についても問われます。
そういった意味においては、電験三種で覚えた公式をただ丸暗記するだけだと、少し不十分かもしれません。
出題頻度については、他の三機(器)に比べてやや低い傾向にあるように見えます。(直近10年では、 [H24:問1] の1問のみ)
誘導機
誘導機についても、電験三種【機械】科目での計算問題とほぼ同レベルか、やや難しい位の難易度です。
電験三種でもおなじみの、\( P_{2}:P_{c}:P_{0}=1:s:(1-s) \)の式を用いて、二次入力、銅損、出力、あるいは、トルクや効率求める問題が頻出です。
電験三種との違いとしては、あまり出題されることのなかった『励磁回路』について、よく理解をしておく必要があります。
また、すべりの範囲が \(1<s<2、s<0 \)であった場合における誘導電動機(発電機)の挙動についても問われる問題が出題されます。
- \(1<s<2 \) の時…制動運転(逆相ブレーキ)
- \(s<0 \) の時…発電運転(回生ブレーキ)
また、巻線型誘導機ではトルクの比例推移についてもよく出題されます。
電験三種に比べてより深堀して理解する必要がありますが、基本的に過去問を一通り理解しておけば、ほぼほぼ得点をすることが出来るため、選択される方も多いと思われます。
ただし、今年度(令和3年度)では、思わぬトラップに引っかかった受験生も多くおられるようです…
月並みですが、問題文を落ち着いてよく読んで取り組むことが大切と言えます。
同期機
同期機は、三相同期発電機における電流、電圧ベクトルを理解することが基本となります。
『ベクトル』という用語が出てきましたが、等価回路を元に負荷角や力率を表す向きを正しく理解することが重要であり、ただ単に数式に当てはめて計算するだけではない点が、同期機の分野を難しくさせているのではないでしょうか?
同期機からの出題の頻度は他の三機(器)に比べて少ない傾向にありますが、全く選択肢からはずしてしまうのは非常にリスクがあります。
また、[H26:問2]のように、対称座標法と絡めて出題されることもあり、難易度において当たりハズレが大きいとも言えるでしょう。
対称座標法は一回理解してしまえば、色々なパターンに応用が利くので非常に便利ですが、ベクトルオペレータとか出てきて、なかなかとっつきにくい印象ですね。
同期機はややクセのある出題が多いといったイメージがありますが、どのような形式の問題が出題されても、ある程度は太刀打ちできるよう準備が必要です。
とはいえ、やはり、基本パターンは無負荷誘導起電力\(E_{0}\) と、と端子電圧\(V\)、同期リアクタンス\(X\)を用いた等価回路とベクトル図がしっかりと理解できていれば、おおむね得点できるのでは無いでしょうか?
同期機に関する問題は、単位法と絡めて出題されるパターンも頻出です。この点については、電力管理の送電、配電の分野と合わせて理解するのが効率が良いと考えます。
変圧器
変圧器は注意が必要です。いわゆる、諸刃の剣と言えましょう。
基本的には、L形等価回路を正しく書き、公式を立式して当てはめれば解けるパターンが多いですが、一次(二次)側換算した抵抗値やリアクタンスの小数点の桁数が細かくなってしまうことにより、計算が複雑になってハマってしまう可能性が有ります。
計算問題については、変圧器の効率計算や電圧降下、電圧変動率を求める問題が多く出題されます。
電圧変動率の式については、簡易式を使ってよいかどうかで値が変わる可能性があるので、いずれの場合でも対応できるように日頃から練習しておくことがが必要です。
また、まれにスコット変圧器[H23:問2]や、三相変圧器の異容量V結線[H25:問2]について出題されることがあります。
これらの分野は三相交流回路におけるベクトルの位相差についてもきちんと理解することが重要であり、やや難解です。(ちなみに、私もいつまでたっても苦手な分野です)
変圧器については、他の問題がどうしても手が出なかったときの保険として備えておくのも一つの戦略と言えましょう。
パワーエレクトロニクス(パワエレ)
パワーエレクトロニクス(パワエレ)は、他の四機(器)や、自動制御と比べて異質と言えましょう。
出題内容としては、
- 整流回路
- 交流電力調整装置(バルブデバイス)
- インバーター回路
- チョッパ回路
- サイクロコンバーター
などから出題されます。
パワーエレクトロニクス(パワエレ) を難しくしている理由の一つとして、回路における電圧、電流が時間とともに変化するため、それぞれのタイミングでの挙動がどうなっているかがわかり辛いという点にあると考えます。
つまり、回路上の素子(ダイオード、サイリスタ、IGBT、コイル、コンデンサ etc)の動作が時間と共に変化することによって、流れる電流の向きや大きさが刻々とその都度変わってしまうため、『時間』変化を伴う各電気諸量を理解する必要があります。
私自身も正弦波のグラフが上手に書けない為、どうしても苦手意識が消えないでいます💧
【機械・制御】科目における大問4問中、 パワーエレクトロニクス(パワエレ) については捨てる人も多いかもしれません。(私も令和3年度の試験は全力で捨てました!問題文すら読んでいません。)
ただし、他の3問が難化した年度では、やむを得ず選択せずを得ない場合もあるでしょう。
全く準備しないというのもさすがにリスキーであるため、単元を絞って準備しておくことも検討が必要です。
個人的には、交流回路理論があまり出てこないチョッパ回路くらいは、電験三種【機械】科目の範囲を多少おさらいしておく位の準備で十分かと考えています。
まとめ
以上、電験二種二次試験【機械・制御】科目について、
- 直流機
- 誘導機
- 同期機
- 変圧器
- パワーエレクトロニクス(=パワエレ)
の各項目について、出題の傾向についてまとめました。
先述の通り、
①~④の4機(器)を確実に自分の物にしておくことで、大きく得点を稼ぐことが出来るでしょう。
個人的なおススメとしては、
誘導機>(直流機)>変圧器=同期機>直流機>>>>>>パワエレ(全力で捨て?)
の順で、問題を選択するのが良いと考えます。
- 電験二種二次試験【機械・制御】は殆ど計算問題
- 大問4問中の2問を選択し、60分間で解答
- 直流機、誘導機、同期機、変圧器の4機(器)を確実に自分の物にして、得点を稼ぐことが出来るかがポイント
- 同期機、変圧器はハズレの時もある(但し、選択肢から全く外してしまうのはリスキー)
- パワエレは捨ててもO.K.(?)
- 選択問題のおススメは、誘導機>(直流機)>変圧器=同期機>>>>>>パワエレ
今回はここまでとさせて頂きます。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。