電験(電気主任技術者試験)は難関資格として知られています。
その一方で、単に取得が難しいだけではなく、電験の資格を取得していることにより他の資格試験の受験において優遇される点が多く、大きなアドバンテージを得られるということについて、実はあまり知られてないのではないでしょうか?
私自身、50歳を前に“電験三種“と”エネルギー管理士【電気分野】“に挑戦し、無事に合格することが出来ましたが、資格を取得してからの方が他の資格試験に対してより一層大きく興味と感心を持つようになりました。
今回は電験の資格取得によって得られる、他の資格試験に対するアドバンテージについて解説します。
電気主任技術者の有資格者が得ることの出来る他の資格試験に対するアドバンテージについて
電気主任技術者(一種・二種・三種)の資格取得者は、他の多くの資格試験受験に対してアドバンテージを持っています。
具体的には、
- 試験科目の一部免除
- 受験資格を得るまでに必要な実務経験期間の短縮
の2つが挙げられます。
ちなみに電気主任技術者試験を受験するにあたり、試験課目を免除できる他の資格はひとつもありません。
※電気主任技術者試験は、受験資格を得るための実務経験等は不要であり誰でも受験可能である一方で、すべての受験者が全4科目を受験し、すべての科目に合格する必要があります。
(少し大げさですが…)電気主任技術者試験の持つ権威がいかに大きいかがお分かりかと思います。
電気主任技術者(一種・二種・三種)の資格取得者が得ることが出来る、他の資格試験に対するアドバンテージについて表にまとめてみました。
試験科目の一部免除 | 受験資格を得るための実務経験期間 | |||||
電気主任技術者種別 | 一種 | 二種 | 三種 | 一種 | 二種 | 三種 |
第一種電気工事士 | ○:筆記試験免除 | 免状交付後の実務経験5年で申請による取得可 | ||||
第二種電気工事士 | ○:筆記試験免除 | ※受験は誰でも可能 | ||||
認定電気工事従事者 | ー | 認定講習の受講資格(講習修了にて資格認定) | ||||
消防設備士 | 「基礎的知識」及び「構造・機能及び工事・整備」のそれぞれの科目中における「電気に関する部分」が免除 | ○:受験資格(甲種) ※乙種は誰でも受験可能 | ||||
弁理士 | ○:二次・選択科目免除 | ー | ー | |||
社会保険労務士 | ー | ○:受験資格 | ー | |||
建築設備士 | ー | 実務経験2年(資格無しの場合:最大9年) | ||||
建築物環境衛生管理技術者(通称:ビル管) | ー | 実務経験1年 | 実務経験2年 | |||
1級電気工事施工管理技士 | ー | 実務経験6年(資格無しの場合:最大15年) | ||||
2級電気工事施工管理技士 | ー | 実務経験1年(資格無しの場合:最大8年) | ||||
労働安全コンサルタント | ○ | ー | ○ | ー | ||
職業訓練指導員(テクノインストラクター) | 一部免除 | 実務経験0~8年 |
第一種・第二種電気工事士
資格内容
第一種電気工事士
電気工事士法において規制されている次の電気工事の作業に従事することができます。
- 1. 自家用電気工作物のうち最大電力500 キロワット未満の需要設備の電気工事
- 2. 一般用電気工作物の電気工事
ただし、1.の作業のうちネオン工事と非常用予備発電装置工事の作業に従事するには、特種電気工事資格者という別の認定証が必要です。
第二種電気工事士
一般住宅や小規模な店舗、事業所などのように、電力会社から低圧(600ボルト以下)で受電する場所の配線や電気使用設備等の一般用電気工作物の電気工事の作業に従事することができます。
引用元:電気工事士の資格と範囲 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター
試験課目の一部免除
第一種・第二種・第三種電気主任技術者免状の取得者は、申請により筆記試験が免除になります。
引用元:第一種電気工事士試験 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター
引用元:第二種電気工事士試験 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター
受験資格について
第一種・第二種電気工事士試験は受験資格はありません。
受験資格を得るまでの実務経験期間は無く、誰でも受験が可能です。
免状交付について
■第二種電気工事士の免状交付について
第二種電気工事士の免状については、第二種電気工事士の試験に合格し申請すれば交付が受けられます。
■ 第一種電気工事士の免状交付について
第一種電気工事士の免状については、第一種電気工事士の試験合格に加え、3年以上の実務経験が必要になります。
■ 第一種電気工事士の試験合格以外による免状交付について
第―種電気工事士試験合格以外の場合、次の資格と実務経験があれば、都道府県知事に申請して第―種電気工事士免状の交付を 受けることができます。
- (a)電気主任技術者免状の取得者で、免状取得後5年以上電気工作物の工事、維持または運用に関する実務に従事していた方
- (b)昭和62年以前に実施されていた高圧電気工事技術者試験の合格者で、合格後に電気工事に3年以上従事していた方
引用元:電気主任技術者の免状交付 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター
認定電気工事従事者
資格内容
最大電力500kW未満の需要設備(「自家用電気工作物」という)のうち、電圧600V以下で使用する電気工作物の工事(電線路に係るものを除く)(簡易電気工事)に従事することができます。
引用元:講習のご案内|一般財団法人 電気工事技術講習センター
資格認定条件
- 申請のみでOK
- 第一種電気工事士試験合格者
- 第二種電気工事士免状取得後、電気工事に関し3年以上の実務経験を有する方
- 電気主任技術者免状取得後、電気工作物の工事、維持若しくは運用に関し3年以上の実務経験を有する方
- 講習を受けた後申請
- 第二種電気工事士免状の交付を受けた方
- 電気主任技術者免状の交付を受けた方
引用元:講習のご案内|一般財団法人 電気工事技術講習センター
消防設備士
資格内容
屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、自動火災報知設備などの消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置や、工事、整備等を行うことが出来ます。
受験資格
- 甲種…国家資格等によるものと、学歴によるものの2種類があります。第一種・第二種・第三種電気主任技術者免状の交付を受けている者は、受験資格があります。
- 乙種…誰でも受験可能です。
試験課目の一部免除
筆記試験のうち、「消防関係法令」を除き、「基礎的知識」及び「構造・機能及び工事・整備」のそれぞれの科目中における「電気に関する部分」が免除になります。
弁理士
弁理士試験とは
弁理士試験は、弁理士になろうとする方が弁理士として必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とした試験です。
弁理士試験に合格し、実務修習を修了された方は、「弁理士となる資格」が得られます。弁理士試験は、筆記試験と口述試験により行います。
筆記試験は短答式と論文式により行い、短答式に合格した方でなければ論文式を受験することはできません。
また、筆記試験に合格した方でなければ口述試験を受験することはできません。
引用元:弁理士試験の概要 | 経済産業省 特許庁
試験科目の一部免除
第一種電気主任技術者免状又は第二種電気主任技術者免状の交付を受けている者は、論文式筆記試験(選択科目)の一部について免除されます。
- 免除される科目…理工Ⅱ(数学・物理)
引用元:他の公的資格に基づく論文式筆記試験(選択科目)の免除について | 経済産業省 特許庁
社会保険労務士
受験資格について
社会保険労務士試験を受験するためには、受験資格が必要です。
受験資格は、主に
- 1.学歴
- 2.実務経験
- 3.試験合格
の3つに分けられます。
このうち3.試験合格について、厚生労働大臣が認めた国家試験に合格した者として、第一種・第二種電気主任技術者に合格した者に対し受験資格としています。
引用元:受験資格・事前確認|社会保険労務士試験オフィシャルサイト
建築設備士・建築物環境衛生管理技術者・1級/2級電気工事施工管理技士
受験資格を得る実務経験期間の短縮
- 建築設備士
- 建築物環境衛生管理技術者(通称:ビル管)
- 1級・2級電気工事施工管理技士
これらの資格については受験資格を得るまでに、最低1年以上の実務経験期間が必要となります。
第一種・第二種・第三種電気主任技術者試験の資格取得により、いずれの資格に対しても、受験資格を得る実務経験期間を短縮することが出来ます。(ただし、実務経験期間免除になる訳ではありません。)
労働安全コンサルタント
資格内容
労働安全コンサルタントは、厚生労働大臣の指定登録機関での登録を受け、事業場における労働安全又は労働衛生の水準の向上を図るため、事業者からの依頼により事業場の診断や、これに基づく指導を業として行う専門家とあります。
受験資格
受験資格として、第一種電気主任技術者の免状の交付を受けている者としています。
職業訓練指導員(テクノインストラクター)
資格内容
職業能力開発促進法の規定に基づく公共職業能力開発施設(国・都道府県が職業訓練を行うために設置した施設)及び認定職業訓練施設(事業主等が職業訓練を行うために設置した施設)で訓練指導に当たる者を職業訓練指導員(テクノインストラクター)といいます。
これらの施設で訓練を担当する指導員は「職業訓練指導員免許」を必要とします。
引用元:職業訓練指導員(テクノインストラクター)免許 | 技能に関する資格 | TOKYOはたらくネット令和2年度版
試験科目の一部免除
職業訓練指導員試験の受験にあたり、免許職種:電気科、電気工事科について、以下の資格を有している者に対し学科試験の内、系基礎学科・選考学科の一部を免除としています。
- 第一種・第二種・第三種電気主任技術者
- エネルギー管理士【電気分野】
まとめ
ここまで電験(電気主任技術者試験)の資格取得者は、他の資格試験に対して、試験課目の一部免除、受験資格取得までの実務経験年数の短縮の面において、多くのアドバンテージを持っていることについて解説してきました。
電験(電気主任技術者試験)は、第一種・第二種・第三種とありますが、第三種に比べ、二種、一種の方がより大きなアドバンテージを得ることが出来、資格取得に対して有利となる点が多いことがわかります。
電験(電気主任技術者試験)の資格取得によりアドバンテージを得られる他の資格のうち、実務経験が必須な資格
- 建築設備士
- 建築物環境衛生管理技術者
- 1級・2級電気工事施工管理技士
については、勤務先における業務内容や受験者の職場環境によってっては資格取得が困難である場合も多いと思われます。
電験三種の資格取得後にさらなるステップアップを目指すためには、実務経験が不要であり、且つ、電験の資格のアドバンテージを有効に活かせる資格を目指すことがおススメと考えます。
- 電験(電気主任技術者試験)資格取得者は、他の資格試験に対して、試験課目の一部免除、受験資格取得までの実務経験年数の短縮の面において、多くのアドバンテージがあります。
- 電験三種に比べ、二種、一種の方が、より大きなアドバンテージを得ることが出来ます。
- 弁理士、社会保険労務士、安全衛生コンサルタントについては資格取得に対して電験三種だけではアドバンテージはありません。
- 電験三種取得後、次に目指すべき資格試験は以下の二つがおススメです。
- 電験二種、一種…電験三種に比べて、他の資格試験に対してより大きなアドバンテージを得る事が出来る。
- 第二種電気工事士…筆記試験が免除となることにより、技能試験に専念して対策を進める事が出来る。
今回はここまでとさせて頂きます。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。