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【電験戦線異常あり!?】電気主任技術者の現状における課題と取り組みについて徹底分析!

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2021年4月、経済産業省から『2022年度より電験三種が年2回受験可能』のニュースが発表されました。

令和4年度の電験三種(第三種電気主任技術者試験)は、

  • 令和4年:8/21(日)
  • 令和5年:3/26(日)

に実施されます。(参照:令和4年度電気主任技術者試験の実施日程等のご案内|ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター)

昨今、再生エネルギーの発電設備の増加、あるいは、電気主任技術者の高齢化に伴う退職者の増加、電気保安業界への入職者の減少等に伴い、電気主任技術者の確保が困難になっている点が問題視されています。

上記の『電験三種年2回受験』についても、電気主任技術者の確保を目的としたものでありますが、それ以外にも、経済産業省において様々な取り組みがなされています。

今回、2021年~2022年にかけて、電気保安制度ワーキンググループ (METI/経済産業省)で討議されている、

  • 電気保安人材の現状分析と取り組みの方向性
  • 電気保安人材に係る制度見直し

についてフォーカスし、独自の分析を元に解説をしたいと思います。

【有利?不利?結局どうなるの?】電験三種の年2回受験と現状の問題点に対する課題解決について
【有利?不利?結局どうなるの?】電験三種の年2回受験と現状の問題点に対する課題解決について2022年度より第3種電気主任技術者試験(電験三種)の受験機会を、これまでの年1回から年2回に増やす事となります。 電験三種の受験機会が年2回に増える事になった背景として、実は電気保安人材の確保が難しいといった問題点が挙げられています。 電気保安人材である電験(電気主任技術者)の有資格者について、今後どうなっていくのか??? 自身の転職活動経験も合わせて、まとめて行きたいと思います。 ...

本記事の内容については、電気保安制度ワーキンググループ (METI/経済産業省)の議事から引用しております。

現状における問題点

第二種電気主任技術者における現状

まず、『第二種電気主任技術者』における現状について解説します。

第二種電気主任技術者は、主に中規模の発電設備(5,000kW以上)や大規模工場等の電気工作物の監督に従事します。

第二種電気主任技術者の免状取得者数は、直近での試験合格者数の増加もあり、今後毎年1,000~1,300人程度で推移すると予想しています。

第6次エネルギー基本計画の需給見通し(引用元: METI/経済産業省))によると、今後、2030年にかけて年間100件ぐらいのペースで、第二種電気主任技術者が必要な再エネ設備が増加すると予想しています。

一方で、例年の入職者は毎年300~400人程度であり、今後、高齢者の退職も踏まえれば、再エネ設備が山間部や僻地に再エネ設備が導入されることを見据えると、将来的に第2種電気主任技術者の確保が難しくなる可能性があるとしています。

第三種電気主任技術者における現状

次に、『第三種電気主任技術者』における現状について解説します。

第三種電気主任技術者は、5,000kW未満の小規模な発電設備や、ビル、工場、コンビニ等の電気工作物を監督に従事します。

第三種電気主任技術者の新規の免状取得者は毎年4,000人程度となっています。新規の第三種電気主任技術者の免状取得者すべてが電気保安業界へ入職している訳ではなく、高齢化に伴う退職者の数との比較において、ほぼバランスしている状態であるとしています。

一方で、 第6次エネルギー基本計画の需給見通し(引用元: METI/経済産業省))によると、今後、2030年にかけて年間2,000件ぐらいのペースで、第三種種電気主任技術者が必要な再エネ設備が増加するとしています。

すなわち、将来的に第三種電気主任技術者が不足していく可能性があるとしています。

電気主任技術者の人材不足に対する対応について(足元の取組)

経済産業省では、将来的な電気主任技術者の人材不足の可能性に対応していくため、供給面(電気主任技術者に着目した対策)、需要面(電気工作物に着目した対策)双方から取り組みを実施してきたとしています。

電気主任技術者の確保【供給面】

第三種電気主任技術者試験(電験三種)の年2回受験 ※令和4年より実施

まず、最初に挙げられる取り組みとして、受験機会を増やすことによる資格者の確保としています。

令和4年度より、第三種電気主任技術者試験(電験三種)を年2回実施となります。

また、科目別の合格制度の有効期間の受験可能な回数については6回に統一されます。

これにより、3年間のうちに初回受験が初年度の上期の場合には計6回、下期の場合には計5回の受験機会を得ることができ、長期的な資格者の確保に繋がるとしています。

(参考:令和4年度第三種電気主任技術者上期試験受験案内~P.6)

電気主任技術者試験におけるCBT方式の導入 ※令和5年より実施予定

次に、電気主任技術者試験におけるCBT方式の導入です。

第三種電気主任技術者試験(電験三種)において令和5年度からのCBT方式の本格導入に向けて準備が進められています。

令和4年度のパイロットテストについて、第三種電気主任技術者CBTパイロットテスト概要 | CBT-Solutions CBT/PBT試験 受験者ポータルサイト 既にアナウンスされています。

これについても、受験機会を増やすことによる資格者の確保等を目的としています。

さらに、CBT方式(Computer Based Testing)を導入することで、受験日時を一定期間内の複数の試験日・時間帯から選択できるものとすれば、平日での受験も可能となり、更なる資格者の確保に繋がるとしています。

上記、電験三種の年2回受験、CBT方式の導入により、年間700人の有資格者の増加を見込むとしています

免状における旧姓の使用について ※令和4年より実施

令和4年より、電気主任技術者、および電気工事士の免状について旧姓の使用が可能となりました。

これまで、電気主任技術者資格や電気工事資格の免状には、氏名に旧姓が使えるように運用がされていませんででした。

免状交付等の手続で本人確認手段として、これまで住民票の写し等で行っていた点について、令和4年度から本人確認手段としてマイナンバーカードなども使用できるよう、制度改正を予定としています。

電気事業法に基づく資格は、令和4年から旧姓使用が可能となります(METI/経済産業省)

電気工事士法に基づく資格は、令和4年から旧姓使用が可能となります(METI/経済産業省)

引用元:電力の安全 (METI/経済産業省)~お知らせ:2021年9月17日

入職促進のための広報活動

入職促進のための広報活動ということで、電気保安人材を安定的に確保していくため、電気保安・電気工事業界等が連携して、若者をメインターゲットにワット・マガジンを開設し、SNSとも連携しながら情報発信を行っています。

認知度向上について、これまで様々な情報を数多く提供してきたが、入職対策を一層強化するため、電気主任技術者免状に係る認定校を対象にアンケート調査等を実施する予定としています。

外部委託承認制度における実務経験年数の見直し ※令和3年より実施

外部委託承認制度において、必要な実務経験年数を保安管理業務講習を修了した場合、第三種5年、第二種4年を一律3年に短縮としています。

保安管理業務講習については、講習実施者一覧を経済産業省HPに順次公表し、令和3年9月までに約700人が受講済みとなっています。

保安管理を行う電気工作物に対する規制緩和【需要面】

太陽電池発電設備の外部委託可能な範囲の拡大 ※令和3年より実施

これまで太陽電池発電設備について、外部委託が可能な範囲については、7,000Vかつ2,000kW未満としていましたが、出力を5,000kW未満まで拡大し、令和3年4月1日に改正施行しました。

第三種電気主任技術者が監督可能な発電設備を増やすことにより、外部委託を行う要件を緩和することを狙いとしています。

スマート化機器を活用した遠隔での月次点検 ※令和3年より実施

スマート化機器を活用した遠隔での月次点検について、第三者認証を受けたスマート化機器を製造段階で取り付けた需要設備については月次点検のうち、3か月に2回の遠隔点検を可能としています。

これに伴い点検員の移動時間分を削減し効率化を図ったものとなります。

また、太陽電池発電所については監視カメラ等で適確に行える点検項目については遠隔による点検を可能としています。

電気主任技術者の配置要件の見直し ※令和4年度中の制度見直しを検討

第10回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会 電気保安制度ワーキンググループにおいて、主任技術者制度に係る見直しについて議論がされています。

特高(特別高圧)に連系する再エネ発電設備は第2種の電気主任技術者の選任が必要です。

現行の統括制度では、一定の条件を満たせば1人の統括電気主任技術者が再エネの発電設備を6か所まで監督することは可能ですが、その条件として、統括電気主任技術者が2時間以内に電気工作物の設置場所に到達できることを求めています。

これに対し、スマート保安技術の活用によって、1人の統括電気主任技術者による確実な指揮監督の下、第三種種電気主任技術者免状を持つ担当技術者を配置して、この担当技術者(=第二種種電気主任技術者の資格を持たない)が2時間以内に電気工作物の設置場所へ到達できる体制も可能とするべく、検討が進められています。

すなわち、統括電気主任技術者(第二種電気主任技術者)は、被統括事業場との距離が2時間以内である必要はなく、担当技術者(第三種電気主任技術者)が被統括事業所(電気工作物の設置場所)へ2時間以内に到達できる場所に常勤していればよい。ということになります。

私自身、このニュースを目にしたとき、今後はより一層、実務経験が重視されるということを感じました。

検討の方向性として令和4年度中の制定見直しに向け、主任技術者制度のあり方について検討をすすめるとしています。

取り組みに対する所感

電気主任技術者の確保

電験三種の年2回受験や、CBT方式の導入により、受験機会を増やすことによる資格者の確保等を目的としていますが、試験回数の増加足元での試験合格者が増加したとしても、電気保安業界への入職者向上とイコールにはならないと感じます。

いままでと同様に、単にペーパー電気主任技術者だけが増えるだけではないか?という気がします。

CBT方式についての詳細はまだはっきりと決定されてはいないようですが、CBT方式での試験で電気主任技術者に必要な能力を図ることが出来るのか?やや疑問にも感じます。

電験三種の年2回受験に伴い、科目合格の留保が3回から6回に増える事となり、これまでに比べて試験が易化することにならないか?懸念があると感じます。

保安管理を行う電気工作物に対する規制緩和

さまざまな取り組みに対し、既に改正施行されているもの、現在検討中なものを含めて、概ね良い方向であると考えています。

電気主任技術者の活躍の場が増えることは望ましいと考えていると同時に、認知度の向上にも繋がると言えるでしょう。

その一方で、

については、まだその効果があまり見えていない気がします。

今後も、電気主任技術者の活躍の場がさらに増えていくよう、更なる仕組みの整備がが期待されるところです。

入職率の向上

第8回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会 電気保安制度ワーキンググループの議事録を見るにおいて、委員会メンバーや経産省の担当者の間で、ワット・マガジンに対する期待の高さがうかがえるものとなっています。

ワット・マガジンに対しては、若者の職業選択のためのヒント、職業教育の観点からも、「地道な入職対策」を期待されているとしています。

また、「#就職」とか「#若者」とか「#男性・女性」というハッシュタグをつけることにより、若者が保安業界に興味を持ち、サイトを見て電気保安業界に興味を持ち、入職率の向上に繋がるとしています。

議事録の中において、このような意見が出されています。

~(中略)~2種は、どうしても大容量の設備の業務に携わってみたいという認識で必要に迫られて資格を取って入職する方がいらっしゃると思いますが、3種は、その資格自体がステータスになりますので、職に就きたいから取るという方は少ないと思っています。ですから、保安技術やそのような業務についての認知度が非常に重要だと考えています。

特にWatt Magazine、約63万件の閲覧者があるということで、これが多いのか、少ないのか分かりませんけれども、かなりの方が見てくださっている。このことが、保安業務・技術を認知していただいて、特に新卒者に就職を指導してくれる先生方や、取巻く父兄の方々の認知度の向上に非常に重要と考えております。このWatt Magazine、私も見ましたけれども、非常によくできていて、どんどん広めていきたいと思っています。

そこで、3種、2種の受験者、あるいは合格者というのはほとんど変わらないので、現状としては、このまま数年たてば、また50代、60代、70代の方々が業務を行っている中でやりがいやあるいは魅力を見つけて転職する方が増えて同様の状態を継続するのではないか、その傾向が現れているのではないかと思っています。ですから、年代比率を変えるため若い方をどうやって入職させるかというのが一つの課題であると思っています。

引用元:第8回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会 電気保安制度ワーキンググループ(METI/経済産業省)議事録

コメントの内容について、

  • せっかく、電験三種の資格を取ったとしても、資格が有効に活かされていない
  • ワット・マガジンのような情報発信源をもっと有効に活用していき、電気保安業務、技術の認知度を向上していく必要がある
  • 若い人の入職がさらに増やしていくことが課題

といった事が述べられています。

ワット・マガジンの今後の益々の発展に期待したいと思います。

まとめ

今回、発表された経済産業省における電気保安人材確保に向けた取り組みついて、(自身もペーパー電気主任技術者の一人として)率直な感想として、やや物足りない感が否めません。

電験三種の年2回受験や、CBT方式の導入により、足元での試験合格者が増加したとしても、電気保安業界への入職者向上とイコールにはならないと感じます。

また、さまざまな規制緩和などの取り組みについても、既に電気主任者として一線で活躍している人にとってはメリットがあるものの、これから電験を取得し、新たに電気保安業界を目指す人にとっては、あまりメリットを感じられません。


近年、

  • 再生可能エネルギー
  • 脱炭素
  • 新電力

などなど、電気業界に対して世の中の注目と関心が大いに高まっている事は非常に歓迎すべきと感じます。

一方で、電気主任技術者の活躍の場や、実際の仕事における実状について、いまいち見えていないのでは?と考えます。

電気技術者試験センター のホームページには、活躍する電気技術者達 の紹介がされています。

多くの電気主任技術者の方々が多方面で活躍されている事を知ることができ、非常に有益な内容でありますが、TwitterをはじめSNS等のメディアにおいては、まだ、多くの人に知られているとは言えないというのが実状ではないでしょうか?

電気主任技術者の認知度の向上とともに、電気主任技術者にとって魅力があり、且つ自信を持って働ける環境の創出が必要だと考えます。

最近は、Twitter、YouTubeなどにより電験に関する情報発信や、コミュニティの拡大、電気の資格試験の受験者や電気保安業界の方々との交流が非常に盛んになっています。

今後、再エネ設備の増加に伴う電気保安業界の活性化、並びに電気主任技術者の地位やイメージ向上の動きがますます活発になることを期待するとともに、(ペーパー電気主任技術者である)私自身も、何らしか関わっていければと考えます。

今回はここまでとさせて頂きます。(少し長文でした)

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。