電験二種二次試験【電力・管理】では、【計算】問題が約50~60%ほど出題されます。
この【計算】問題のレベルについて、電験二種一次試験を突破して二次試験を受験された方はご存じの通り、電験三種とは比べ物にならない位複雑で、且つ計算量も多いです。
『電験三種の【電力】科目の【計算】問題に対し、単に選択肢が無くなっただけじゃないの?』と思われがちですが、とてもそんなレベルではありません。
電験二種二次試験【電力・管理】科目における 【計算】問題 について、 これまでの試験とどこが違うのか?何に気を付けて試験に臨むべきかについて、私自身の経験を元に経験をについてまとめました。
出題される問題の傾向
電験二種二次試験【電力・管理】科目は、電験三種の【電力】科目と【法規】科目を足して割ったような範囲から出題されます。
【電力】分野と【管理】分野で見た場合、【電力】分野からの出題の方が【計算】問題の比率が高いと言えます。
【管理】分野からの出題範囲において、
- 電気工作物の運用・管理・保全(点検、診断、試験)
- 保安規程、系統連系技術要件ガイドライン
とについては、ほぼ【論説】問題として出題されています。
【管理】分野については、変電所の負荷特性(需要率、負荷率、不等率 )の【計算】問題を除けば、ほぼ【論説】問題と考えても良いでしょう。
過去には、[H28:問5]、[H21:問3]のように、接地設計に関する【計算】問題が出題されていますが、分野としてはかなりマニアックな部類に入ると考えます。
普段業務で関係している人でない限り、選択しなかった人の方が多いのではないでしょうか?
電験二種二次試験【電力・管理】科目では、
- いかにして確実に得点できる問題を選択するか
- 複数ある【計算】問題の中から、どの【計算】問題を選択するか
が、合否を分けるポイントと言っても過言ではありません。
電験二種二次試験【電力・管理】 科目で出題される【計算】問題について、下記の問題集及び、試験の問題と解答 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センターのサイトを参考にして過去問の分析を行いました。
出題範囲における各分野を【発電】、【変電】、【送電】、【配電】と分類した場合、概ね以下のような傾向が見られると考えます。
各分野における出題パターン
発電(出題頻度★)
発電分野における【計算】問題は『水力発電』から出題されるケースが殆どです。
出題される内容としては
- 比速度
- 流れ込み式水力発電所における年間平均流量、年間発電電力量
- 揚水発電所における諸量
などからの出題が頻出です。
その他、火力発電と共通する分野として、
- 速度調定率
- 系統の周波数変動
などからも頻繁に出題されています。
速度調定率は、今年(令和3年)【電力・管理】の問6でも思いっきり出ましたね!
一方で、他の発電分野(風力、地熱、太陽光 etc)からは【計算】問題は殆ど出題されません。
電験一種二次試験では、火力発電における燃料の燃焼に関する【計算】問題が[H26:問1]で出題されています。火力発電における計算問題については、きわめてレアなケースといえるでしょう 。
この分野については、電験三種【電力】科目では比較的ポピュラーでしたが、電験二種二次試験でもそのうち出題されるかもしれません。
発電分野における計算問題については、やや計算量が多い傾向にはあるものの、電験三種【電力】科目の内容をしっかりと理解していればまず十分と考えます。
変電 (出題頻度★★)
変電分野における【計算】問題もそれほど多くはありません。
むしろ『変圧器』の分野として、【機械・制御】科目の方で出題されることが多いと言えます。
【電力・管理】科目では、過去には変圧器の並行運転について【計算】問題として出題がされています。
また、変電所における負荷特性についての【計算】問題もよく出題されます。(見方によれば、配電分野に当て嵌まる内容になるかもしれませんが…)
具体的には
- 需要率
- 負荷率
- 不等率
の値や、
- 変圧器の全日効率
- 変圧器が過負荷にならないようなコンデンサ容量
等の【計算】問題となります。
これらの問題は、電験三種【法規】科目の問題と難易度的には大差は無く、計算もそれほど複雑ではありません。
電験二種二次試験を受験される方であれば、確実に得点源とされる内容と思われます。
送電 (出題頻度★★★)
送電分野は【計算】問題の超人気分野です。まさに送電分野を制する者=【電力・管理】の【計算】問題を制するといっても過言ではありません。
大問6問中、1問以上は必ず出題されます。
しかも、送電分野の【計算】問題は、年度によって鬼ムズの年がしばしばあります。
押さえておくべき内容は
- 短絡計算
- 一線地絡電流の計算
- 電力用コンデンサ投入時の力率、電圧変動率の改善
- 送電線路における電気的特性(有効電力、無効電力、力率)
- 電磁誘導電圧と静電誘導電圧
- 電線のたわみの計算
から、頻出されている傾向があります。
電験三種【電力】科目では見られなかったような出題も多く、また、計算量も非常に多いです。
出題はある程度パターン化されているため、過去問を繰り返し反復して解くことにより身に付けていく事が王道と言えるでしょう。
配電 (出題頻度★★★)
配電分野からも多くの【計算】問題が出題されています。
過去問の分析結果により、出題される傾向が高い分野は
- 分散型電源を含む配電線の潮流
- 配電線のループ電流
- 地中ケーブルの静電容量、充電電流
- 高調波電流
- 分布負荷
等が挙げられます。
送電分野と同様に、ある程度パターン化されている問題が多い為、過去問を繰り返し解くことが重要です。
攻略のポイント
【電力・管理】科目における攻略のポイントとしては、[送電]、[配電]分野の【計算】問題で、出来るだけ得点を稼ぐかが勝負の分かれ目だと考えます。
各単元における理解度向上
基本中の基本として、まず最優先として各単元における理解度向上が求められます。
[送電]、[配電]分野は覚えるべき公式が非常に多いと言えます。
私の持論として、公式をそのまんま丸覚えするのはあまりお勧めしませんが、[送電]、[配電]分野で頻出の公式については、何も見ずに式の導出まで出来るようになる事が望ましいと考えます。
また、公式を覚える以外にも、
- 送電線、配電線における等価回路、ベクトル図を正確に書けること
- インピーダンスマップを理解し、正しく書けること
- 電力円線図を用いて、受電端、送電端における電圧、有効電力、無効電力をきちんと理解すること
といった点についても、重要と言えるでしょう。
過去問を解く中において、問題文を読む途中で次にどんな図・絵を書けば良いか、次に何の値を求めればよいか、常に頭に思い浮かべながら解くよう意識することも必要です。
甘く見るべからず!電卓の操作が合否を決定する。
【計算】問題では当然、電卓を使用するのですが、この電卓の操作についても日々練習が必要になると考えます。
電卓の操作を素早く・正確に行う事が出来なければ、得点を確実に得る事は出来ません。
特に、桁数の多い複素計算や根号の中が複雑な二次方程式の解を求める計算に対して、非常に限られた時間の中で正確に電卓を操作出来なくてはなりません。
心がけたいポイントとして、
- メモリー機能、逆数、べき乗の短縮計算(電卓のメーカにより異なるため、各自チェックしましょう!)
- 有効桁数に注意(問題文中に指示が無ければ、通常は有効桁数3桁で解答)
- GT機能(集計)の有効活用 ⇒変圧器の全日効率の計算で効果発揮!
- 計算用紙に手書きで書いた数字を間違えずに入力
といった点を意識することが必要です。
問題文に書かれている重要な数字や、条件(単相/三相、線間/相間 etc)、解答すべき単位などについて、丸囲みやアンダーラインを引く等、常に意識するような習慣も身に付けておきましょう!
まとめ
- 電験二種二次試験【電力・管理】科目~【計算】問題攻略のポイント
- [送電]、[配電]分野の【計算】問題で、出来るだけ得点を稼ぐかが勝負の分かれ目
- 各単元における理解度向上が重要
- 何も見ずに公式を導出できるように
- 公式が表す内容と、ベクトル図や等価回路との関連を理解できるように
- 甘く見るべからず!電卓の操作が合否を決する。日々電卓を使っての計算問題の練習を
今回はここまでとさせて頂きます。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。