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【有利?不利?結局どうなるの?】電験三種の年2回受験と現状の問題点に対する課題解決について

【有利?不利?結局どうなるの?】電験三種の年2回受験と現状の問題点に対する課題解決について
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2021年4月、電験界隈にとって衝撃的なニュースが飛び込んできました。

経済産業省は、2022年度より第3種電気主任技術者試験(電験三種)の受験機会を、これまでの年1回から年2回に変更としました。

(令和4年度:2022年度の電気主任技術者試験の実施日程等はこちら

また、電気技術者試験センターより、従来のマークシート式に加え、パソコン画面上で回答できるCBT方式の採用についても正式に発表されました。(2022.12.15発表)

CBT方式については、

  1. CBT方式での開催期間(4週程度を予定・別紙参照)内で、試験会場及び試験日時を選択して受験可能。 試験会場は、全国に約200箇所を予定、その中から選択可能。
  2. CBT方式は、試験日の3日前まで試験会場及び試験日時の変更が可能

ことを特徴として挙げられています。

電験三種の受験機会が年2回に増える事になった背景としては、電気保安人材の確保が難しいといった問題点が挙げられています。

電気保安人材である電験有資格者の確保について、今後どうなっていくのか???

2020年の自身の転職活動経験も合わせて、まとめて行きたいと思います。

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電気保安人材の確保・活用に向けた制度のあり方について

2021年3月22日に開催された、『第5回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会 電気保安制度ワーキンググループ』において、電気保安人材の確保・活用に向けた制度の在り方について討議されました。(出展資料:資料2 電気保安人材の持続可能な確保・活用に向けた制度のあり方について

各議題に対して、私自身の所感を交えて解説していきたいと思います。

電気保安人材の確保に係る現状

電気保安人材の確保に係る現状認識

この資料より、

  1. 自家用電気工作物の設置者のうち約9割が、外部委託により電気主任技術者を選任している。
  2. 外部委託業界では2030年には約2,000人が不足するとしている。人材不足の主な原因は入職率の低さを上げている。
  3. 仮に入職率が+1%増加させた場合でも不足分の約2,000人には至らず、試験制度や電気主任技術者精度の見直しが必要

とあります。

  • ①の『自家用電気工作物の設置者のうち約9割が、外部委託により電気主任技術者を選任している。

については、過去(2019年9月)の審議会でも取り上げられています。

外部委託承認件数が年々増加している一方で、煩雑な審査業務、業務用ビルや、再エネに関する受電・発電設備に対する電気主任技術者の絶対数の不足が問題点としてあげられています。

このことを受け、

  • ②外部委託業界では2030年には約2,000人が不足するとしている。人材不足の主な原因は入職率の低さを上げている。
  • ③仮に入職率が+1%増加させた場合でも不足分の約2,000人には至らず、試験制度や電気主任技術者精度の見直しが必要

への対策として、電験の受験機会の増やすこととなったと見受けられます。

電験三種が年2回受験となったことにより、今後10年で約700人の入職率の増加を見込めるとしていますが、私自身としては、単に受験機会の増加が、イコール入職率の増加に繋がるとは言えないと考えます。

以下に、そう考える理由についてまとめていきます。

電気主任技術者の入職状況

先述のように、自家用電気工作物を設置者のうち約9割が、外部委託により電気主任技術者を選任しています。

が、外部委託を就業先としている比率は、電験三種(第3種電気主任技術者)免状取得者全体の2%しかいません。

外部委託に続き以下、ビルメン、電力、電気工事、建設(電工以外)と続き、累計すると第三種電気主任技術者免状取得者のうち、全体の35%が何かしらの電気設備の工事、維持および運用の保安の監督に従事していると考えられます。

一方で、残りの65%は製造、公務員、その他となっています。

これらの方々の就業先においては、必ずしも自家用電気工作物を設置していないケースもあり得ると考えられ、すなわち電気工作物の保安業務に従事していない事も考えられます。

この結果によると、(私自身も含めてですが)ペーパー電気主任技術者が多い可能性があると言えます。

電験三種の免状取得者の全体に対して、電気工作物の保安業務に従事している人の割合が少ないと考えられます。

これまでの入職対策

電気保安業界への入職対策

経産省では、これまでに電気保安に対する認知度向上、入職の促進に向けて、電気保安・電気工事業界等が連携した民間協議会を発足。女性を含む若者をメインターゲットにポータルサイト「Watt Magazine」(@WattMagazine_JP)を開設し、SNSと連携させて情報発信を開始。

とあります。

また、民間団体において、シニア人材の積極的な活用に取り組んでいるところもある。

としています。

実際、私自身が感じる中においてWatt MagazineのTwitterアカウントについてはまだまだメジャーアカウントと呼ぶには認知度が十分では無いような気がしています。

また、シニア人材の積極的な活用についても、その存在はあまり知られていないのが現状だと考えます。

政府主導で民間団体と協力して電気保安に対する認知度やイメージを向上し、多くの入職者が集まるような動きが出ているにもかかわらず、実状としては十分な効果が得られていないと考えます。

電験三種の年2回受験について

国家試験の受験機会の増加による資格者の確保

電験三種(電気主任技術者試験)について、受験機会を年2回(上期・下期)に変更されます。

令和4年度の第三種電気主任技術者試験の実施日程

  • 令和4年8月21日
  • 令和5年3月26日

となります。

また令和5年度(2023年度)よりCBT方式(Computer Based Training)を導入し、受験機会の自由度を増やす事も狙いとして挙げられています。

CBT方式については、電験三種と合わせて第一種・二種電気工事士試験の一次試験についても導入を目指しています。

一方で、電験一種・二種は二次試験(記述式)がある為、年2回の受験は支障があるとして実施は見合わせるようです。

電験三種の受験に対して年2回に受験機会を増やす事が提示されています。また同時に、CBT方式の導入についても検討が進められています。

電験三種CBTパイロットテストについては、昨年末より実施が開始されています。

受験機会の拡大、および自由度向上により電気保安人材の確保を目指しているとしていますが、単に受験者数を増やす事だけを目的にしていると、結果として、電気工作物の保安業務に従事しない電気主任技術者免状取得者(=ペーパー電気主任技術者)が増えるだけということになりかねないでは?と考えます。

外部委託承認制度の実務経験年数短縮について

自家用電気工作物の設置者は、原則として、自社の従業員の中から電気主任技術者免状を有する者のうちから電気主任技術者(以下、「主任技術者」という。)として選任する必要があります。

しかし、保安管理業務外部委託承認制度により、一定の要件(ex.電圧7,000V以下で受電する需要設備の事業場)を満たし、所轄産業保安監督部長の承認を受けた場合は主任技術者の選任をしないことができます。(=外部委託承認制度)

本議題において、外部委託承認制度に伴う実務経験年数については保安管理業務講習を受講することにより期間短縮を可能としています。

外部委託承認制度の実務経験年数短縮

これにより、第二種・三種電気主任技術者の免状取得者は保安管理業務講習受講することにより、実務経験年数をこれまで最大5年以上だったのが、一律3年以上と軽減されることとなりました。

なお、電気工事士については、既に、第一種電気工事士免状を試験で取得する場合、学歴等によりこれまで試験合格後最大5年以上の実務経験が必要とされていましたが、一律3年以上と短縮されてるよう電気工事士法の一部改正が行われました。(令和3年4月1日より施行)

このように、業務に従事するために必要とされる実務経験年数の短縮化は人材の確保に対するハードルを下げる事に繋がり、また転職や就職希望者にとってもチャンスと捉えられるものと考えます。

短期間での効果はすぐには得られないまでも、長い目で見ると効果的であると考えます。

今後も、電気保安の人材確保の為、必要とされる実務経験年数短縮の動きは益々増えてくることと思われます。

議題に対する議論について

審議会当日の議事要旨では以下のようなコメントが出されています。

○電気保安人材の持続可能な確保・活用に向けた制度のあり方について

<委員等からの主な御意見>

・有資格者のうち2%しか電気保安業界へ入職しない原因を調査すべき。

・20 代の有資格者の電気保安業界への入職促進のためには、電気保安の魅力を伝える等、「学」の分野での取組が重要。

・電気保安業界の人材不足に関して、有資格者の不足が原因ではないのではないか。

・入職者促進策としてネット記事や SNS を活用しているが、若者に届いていない。若者の目に入る方法を検討し、業界の認知度向上が必要。

・電気主任技術者試験の受験機会の拡大に賛成。CBT 導入など試験方法の改革は、離職者や転職者にとって良い取組。各都道府県で実施可能となるよう検討すべき。

<事務局からの主な回答>

・ 自家用電気工作物の約9割が外部委託承認制度を活用しているが、その業務を担う業界への入職率が2%であることは危機的。資格取得者の減少や高齢者の離職等を踏まえ、手当てが必要。

・ 電気保安業界の魅力向上に向け SNS の更なる活用やスマート化の推進等を進めていく。

・ 令和3年度から CBT 導入等の試験改革に向けた調査を行い、万全を期していく。

出展:産業構造審議会保安・消費生活用製品安全分科会電力安全小委員会電気保安制度 WG(第5回)-議事要旨

委員会からの意見について、私自身の所感を述べてみます。

・有資格者のうち2%しか電気保安業界へ入職しない原因を調査すべき。

やっさん

入職を希望する人にとって、電気保安業界に対するイメージがあまり持てない事が問題だと考えます。設備管理や工事となると、やはりキツイ・汚い・危険といった3Kのイメージを持っている人も多いのではないかと考えます。

・20 代の有資格者の電気保安業界への入職促進のためには、電気保安の魅力を伝える等、「学」の分野での取組が重要。

・入職者促進策としてネット記事や SNS を活用しているが、若者に届いていない。若者の目に入る方法を検討し、業界の認知度向上が必要。

やっさん

最近の若い人たちはネットやSNSに対して抵抗があまりないと言えるが、保安業界自体の高齢化が問題とされており、発信する側が時代に追いつけてない面もあるのでは?

・電気保安業界の人材不足に関して、有資格者の不足が原因ではないのではないか。

やっさん

有資格者数の不足は問題ではないと考えます。(事実、有資格者数の2%しか保安業界へ入職していない)資格者数をやみくもに増やすだけでは、人材不足への根本的な解決にはならないと考えます。

・電気主任技術者試験の受験機会の拡大に賛成。CBT 導入など試験方法の改革は、離職者や転職者にとって良い取組。各都道府県で実施可能となるよう検討すべき。

やっさん

受験機会の拡大やCBTの導入などの改革は、有資格者の増加に対しては効果が見込めるかもしれないが、電気保安人材の不足の解消へ直接的に効果があるとは言えないと考えます。

電気主任技術者に対する影響について

私自身、2020年に転職活動を経験しましたが、実際の転職活動で感じたことは以下の点です。

電気保安業界では実務経験が必須

アラフィフでの転職活動は50数社エントリーした結果、一次面接までたどり着けたのは、たったの3社のみでした。

電験三種の資格を強みとして、電気設備管理メンテナンスエンジニア再生可能エネルギーの事業推進といった職種を中心に応募したのですが、殆どが実務経験不足により面接に至る前にお見送りといった結果となりました。

今回の制度変更によって電気主任技術者の有資格者の確保を目的としていますが、実際の転職市場においては、資格だけを持っているよりもやはり実務経験が必要不可欠であることを改めて認識しました。


経産省の報告によると、 保安法人への有資格者の応募は少なくないが、実務経験が不足している有資格者が採用されにくい実態があるとしています。

また、有資格者が実務経験を蓄積したくても、実務経験を積む機会が少ない事も問題として挙げられています。


先の、実務経験年数短縮の動きも含めて、実務経験が無い(あるいは少ない)有資格者が、電気保安業界の門を叩くことの出来る機会の創出が望まれるところです。

電気保安業界に対する(少なからず抱いてしまう)ブラックなイメージ

一次面接までたどりついた企業様のうちの1社については、残念ながら業務内容に対して前向きなイメージを持つことが出来ませんでした。(大変申し訳無いのですが…)

面接の中で説明を受けた業務内容については、以下のような内容が中心でした。

  • 設備管理の仕事は現場中心なので、夏は暑く、冬は寒いなど、環境が悪い中でも業務行わなければならない
  • お客さまの都合を最優先にしなければならないので、勤務時間や出勤日を自由に選べない(夜勤や当直、土日出勤もあり)
  • 危険が伴ったり、汚れたりする作業もありうる

もちろん、電気保安業界すべてがブラックという事では無いと思いますが、やはり業界未経験者からすれば、どうしても悪いイメージが先行してしまうといった事もあるのではないでしょうか?

今回、経産省における人材確保に向けての議論の中で、こういった面に対する取り組みについての討議が十分されなかったことが少し残念に感じました。

電気保安人材確保に向けて、業界のイメージ向上や現場で活躍する人の紹介など、わかりやすい発信を期待したいところです。

とは言え、電験資格保有者は転職でアドバンテージがある!

何だかんだ言いいつつも、アラフィフ+異業種からの転職+実務未経験者でも3社も書類選考を通ったのは、(前向きに考えて)電験の資格があったからこそと思われます。

転職先の企業様にとっても、入社してから資格取得のための時間を取られるよりも、あらかじめ有資格者の方がメリットがある事は間違いありません。

とある転職エージェントの担当者の方から聞いた話ですが、ここ数年、太陽光発電や風力発電などの再エネ設備の飛躍的な増加に伴い、電験二種以上の資格保有者はかなり希少であり非常に多くのニーズがある。といった事も言われていました。

これから電験を目指す方にとって、私の経験談が多少なりとも、参考になれば幸いです。

まとめ

ここまで、電験三種の受験機会が年2回に変更、ならびに政府(経産省)による電気保安人材確保に向けての取り組みについてまとめて来ました。

結論として、電験三種が年2回になっても、試験の難易度としては変わらないと考えます。

その一方で、CBT方式の導入など試験方式が変わることにより、これまでの出題傾向と大きく変わる可能性があると思います。

今回の制度変更は、電気保安人材の確保と保安業界への入職率増加を目的としていますが、結果として大きな効果は期待出来ないと考えます。

根本的な課題解決に向けては、電気保安人材を取り巻く環境が大きく変わる事が必要と思われます。

たとえば、待遇労働環境イメージの向上などなど。

加えて自身の転職経験においても、実務経験年数が無い(少ない)がために保安業界に興味があってもなかなか足を踏み入れる事が出来ないといった現状があります。

これに対しては電験の資格保有者の為の講習会やセミナーなどの受講機会の拡大(オンライン等の活用)、あるいは電験有資格者をターゲットにしたコミュニティの充実などが有効と考えます。

すでにTwitter界隈では、フォロワーさん同士でコラボ企画を組んだり、Youtubeによる対談動画を配信したりと、様々活動をされている方々も多くおられます。

政府や国に任せっぱなしにするのではなく、我々、電気主任技術者が、それぞれ多方面に情報を発信していきながら地位の向上や環境の改善を目指すとともに、電気保安業界の活性化に繋がっていくことが望ましいと考えます。

今回はここまでとさせて頂きます。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。