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【電験三種[理論]科目攻略の為にも必須!】2019年国際単位系(SI)の定義改定と大きな変更点について

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2019年5月20日に国際単位系(SI)の定義が改定されました。

国際単位系(SI)は電磁気学の基本であり、電磁気学を理解する上で必須と言っても良いでしょう。

同時に、電験三種【理論】科目攻略に対しても国際単位系(SI)を理解することは非常に重要と言えます。

その一方で、そもそも国際単位系(SI)はどのように決められているのかについて、普段あまり意識することは少ないのではないのでしょうか?

今回は2019年に改定された国際単位系(SI)の定義改定について、私自身の所感を交えてまとめてみました。

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国際単位系(SI)について

まず、国際単位系(SI)とは何かについて、おさらいすることにします。

国際単位系(略称:SI)は、メートル法のなかで広く使用されていたMKS単位系(長さの単位にメートル m、質量の単位にキログラム kg、時間の単位に秒 s を用い、この 3 つの単位の組み合わせでいろいろな量の単位を表現していたもの)を拡張したもので、1960年の第11回国際度量衡総会 (CGPM) で採択された。

国際単位系 – Wikipedia より

このように、SIはMKS単位系(メートル:m、キログラム:kg、秒:s)を基本単位として、これらを組み合わせて様々な物理量を定義するものとされています。

MKS単位系では力学の単位のみを扱うことが出来ます。

MKS単位系を拡張し、さらに電流の単位アンペア:Aを基本単位に加えたMKSA単位系とすることにより、電磁気学における物理量についても扱うことが出来るようになります。

SIはMKSA単位系の4つの単位系に対し、さらに温度の単位ケルビン:K物質量の単位モル:mol光度の単位カンデラ:cd、の3つの単位系を合わせて7つの単位系を基本単位としています。

単位の名称単位記号
長さメートルm
質量キログラムkg
時間s
電流アンペアA
温度ケルビンK
物質量モルmol
光度カンデラcd
SIにおける7つの基本単位

本記事では、SI単位系の内、電磁気に深く関連する

  • 長さ(メートル:m)
  • 質量(キログラム:kg)
  • 時間(秒:s)
  • 電流(アンペア:A)

の4つの基本単位について、まとめていきたいと思います。

本記事の内容は、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 NMIJ (計量標準総合センター)から引用しています。

引用元 新時代を迎えた計量基本単位 - SI定義改定(国際単位系)-

計量標準総合センター

基本単位について

各基本単位における定義の歴史についてまとめていくことにしましょう。

長さ(メートル:m)

18世紀末まで

メートル条約の締結(1875年)よりも前は、長さの定義として赤道から北極に至る子午線長を10,000kmとして、その1,000万分の1を1mと定義していました。

当時の測量技術における精度からみて、子午線長を基準とした1mの定義はかなり誤差が小さかったようです。

1889年~1960年

いつでも誰でも同じように単位を使えるようにすることを目的とし、長さの定義を定めるためのに、1875年にメートル条約が締結されました。

ちなみに、メートル条約が締結された1875年5月20日を記念して、毎年5月20日を「世界計量記念日」としています。

メートル条約締結までは、長さの定義について上記の地球の子午線長を基準としていましたが地球の地殻表面は単純な球形状または楕円形状ではなく多くの凹凸があり、また地球の大きさを測る際に費用、時間、労力が多大にかかることにより、再現性が疑問視されるようになりました。

それにより、白金90%とイリジウム10%の合金を用い、0℃で間隔1mとなる目盛りが引かれたメートル原器が製作されました。

Platinum-Iridium meter bar

メートル原器 – Wikipedia

やっさん

ピッカピカでカッコいい🤩

1960年~1983年

メートル原器は精度が10-7程度でしたが、壊れたり経年劣化したりすることが問題とされ、1960年に長さの基準は不滅の自然物であるクリプトン86原子の放射光(波長606nm)を用いるように変更されました。

具体的には、1メートルを

クリプトン86原子の準位2p10と5d5の間の遷移に対応する光の真空中における波長の 1 650 763.73倍に等しい長さ

と定義されました。

やっさん

メートル原器による定義に比べてわかり辛い💧

1983年~現在

その後、さらに見直しが重ねられて、1メートルの定義は光の速さと時間(秒)とで表す方法になりました。1983年以降は、1メートルの定義を

1秒の299 792 458分の1の時間に光が真空中を伝わる長さ

とされました。

2019年 SI基本単位の再定義について

2019年5月20日に新しいSIの定義の改定が行われました。それにより、

メートル(記号はm)は長さのSI単位であり、真空中の光の速さcを単位ms-1で表したときに、その数値を 299 792 458と定めることによって定義される。ここで、秒はセシウム周波数 \(Δν_{Cs}\)によって定義される

と改定されました。

メートルについては、1983年の改定時から実質的には変更されていません。

重さ(キログラム:kg)

1889年~2018年まで

長さ(メートル:m)が定義されることにより、体積が計算できることになります。

当初は1キログラムの定義は、最大密度(4℃)における純水:1ℓの質量として定義されていました。

その後利便性を考慮し、1889年に白金製の国際キログラム原器により質量の定義がされました。

Prototype kilogram replica.JPG

国際キログラム原器 – Wikipedia(en)

やっさん

昔、小学校の時の教科書で見たような🙄
メートル原器といい、キログラム原器といい、物理学に対するロマンを感じますね🤩

2019年 SI基本単位の再定義について

重さの単位の定義は、1889年以降これまで約130年に亘って人工物の質量によって維持されてきました。

人工物であるため、表面の汚染などによる質量変動は避ける事は出来ません。

このため、キログラムの定義について自然界に存在する普遍的な定数に基づいて定められることが提案され、新しい定義はプランク定数を通して光子が持つエネルギーと等価の質量に関連づけられました。

それにより、

キログラム(記号はkg)は質量のSI単位であり、
プランク定数\(h\) を単位Js(kg m2 s-1に等しい)で表したときに、
その数値を6.626 070 15×10-34と定めることによって定義される。
ここで、メートルおよび秒は、\(c\)および \(Δν_{Cs}\)に関連して定義される。

と改定されました。

メートル、キログラム共に人工物である原器による定義であったのが、定義化された物理定数に基づく定義に変更されたことになります。

2019年のキログラムに対する定義改定は、非常に大きな変更と言えます。

時間(秒:s)

1956年~1967年まで

1956年までは1秒は地球の自転の周期の長さから定義され、1日を86 000分の1(24時間×60分×60秒)したものを1秒としてきました。

しかしながら、月の潮汐作用などによって生じる地球の自転の不整等により、1日の長さに変動があることがわかり、自転よりも変動が少ない公転を基に定義し直されることになりました。

1967年の間では、1秒は地球の公転から定義され、1太陽年の 31 556 925.9747分の1とされていました。

しかし地球の公転周期(=1年)は非常に長い月日がかかるため、不確かさを検証するには不便でした。

1967年~現在まで

アルカリ金属であるセシウムをの用いた原子時計が時間の定義に相応しいとされ、1967年にそれまでの地球の公転による定義から、セシウム133原子を用いた定義「秒は、セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細構造準位の間の遷移に対する放射の周期の9 192 631 770倍の継続時間である。」に改定されました。

セシウム原子に基づく時間の定義は今日まで変わっていません。

2019年 SI基本単位の再定義について

2019年のSI基本単位の再定義について、秒の定義は実質的には変更されていないが、計測が行われる条件がより厳密に定義されました。

秒(記号はs)は、時間のSI 単位であり、セシウム周波数\(Δν_{Cs}\)、すなわち、セシウム133 原子の摂動を受けない基底状態の超微細構造遷移周波数を単位Hz(s−1 に等しい)で表したときに、その数値を9 192 631 770 と定めることによって定義される。

と改定されました。

やっさん

個人的には、1秒は1日の86 400分の1の方がわかりやすくて良いですね。

電流(アンペア:A)

2019年まで

改正前のSIにおいては、2本の平行電流間に働く力の大きさにより定義されていました。

すなわち、

アンペアは、真空中に1メートルの間隔で平行に配置された無限に小さい円形断面積を有する無限に長い二本の直線状導体のそれぞれを流れ、これらの導体の長さ1メートルにつき、2×10-7ニュートンの力を及ぼしあう一定の電流である。

としていました。

電験三種【理論】に出てくる『平行導体間に働く電磁力』の公式でもおなじみの、

$$F=BIlsin\theta=\left( \frac{\mu_0 I_1}{2 \pi d} \right)\times I_2 = 2×10^{-7} \mathrm{[N]} $$

  ※但し、\( I_1=I_2=1\mathrm{[A]}\) ,\( l=d=1\mathrm{[m]} \)

の式が元になっていることがわかります。

この式より真空の透磁率\(\mu_0\) は、

$$\mu_0 =4 \pi \times 10^{-7} \mathrm{[H/m]=[N/A^2]}$$

として導くことが出来ます。

2019年 SI基本単位の再定義について

2019年のSI基本単位の改定によって、アンペアの定義は大幅な見直しが行われました。旧定義では充分な精度をもって示すことが難しいが、新しい定義は直感的に理解しやいとされ、また、アンペアの定義は重さ(キログラム)と長さ(メートル)の定義に依存しないものになりました。

アンペア(記号はA)は、電流のSI 単位であり、電気素量eを単位C(A・sに等しい)で表したときに、その数値を1.602 176 634×10-19と定める事によって定義される。ここで秒は\(Δν_{Cs}\)によって定義される。

と改定されました。

すなわち、1クーロン=1アンペア・秒であり、

$$\mathrm{C}=\frac {e} {1.602\ 176\ 634 \times 10^{-19}}$$

と定める事によって定義されるとしています。

クーロンは、基本単位のアンペア(記号: A)と秒(記号: s)により

$$\mathrm{C}=\mathrm{A} \cdot \mathrm{s}$$

であることがわかります。

七つの定義定数について

SI基本単位のうち、これまでMKSAの4つの単位系について定義の歴史、および2019年のSIの改定について解説してきました。

今回の2019年のSI基本単位の再定義に伴い、MKSA単位系と合わせて、

  • 温度(ケルビン:K)
  • 物質量(モル:mol)
  • 光度(カンデラ:cd)

についてもその定義の見直しがされました。

その結果SI 単位の定義は、全て七つの定義定数(defining constants)を用いて確立されることになりました。

すなわち、SIの任意の単位(基本単位、組立単位)が七つの定義定数そのもの、もしくは、定義定数の積または商のいずれかによって記述できるようになりました。

以下、七つの定義定数について表にまとめてみました。

SI の七つの定義定数とそれらによって定義される七つの単位

\begin{array}{cccc} \hline 定義定数 & 記号 & 数値 & 単位\\
\hline
セシウムの超微細遷移周波数 & Δ\nu_{Cs} & 9\ 192\ 631\ 770 & \mathrm{Hz}\\
\hline
真空中の光の速さ & c & 299\ 732\ 458 & \mathrm{ms^{-1}}\\
\hline
プランク定数 & h & 6.626\ 070\ 15 \times 10^{-34} & \mathrm{Js}\\
\hline
電気素量 & e & 1.602\ 176\ 634 \times 10^{-19} & \mathrm{C}\\
\hline
ボルツマン定数 & k & 1.380\ 649 \times 10^{-23} & \mathrm{JK^{-1}}\\
\hline
アボガドロ定数 & N_A & 6.022\ 140\ 76 \times 10^{23} & \mathrm{mol^{-1}}\\
\hline
視感効果度 & K_{cd} & 683 & \mathrm{lmW^{-1}}\\
\hline
\end{array}

これまで、SIの基本単位について、例えば

  • キログラムにおける国際原器の質量のような人工物による定義
  • アンペアのような理想化された実験条件による定義
  • メートルのような光の速さによる自然界の定数

のように様々な種類の定義が使われてきましたが、定義定数を使ってあらゆる単位を定義するとものに改めて見直しがされました。

それにより不確かさを最小にし、普遍的な定数に基づいた定義に変更されたことにより、計量単位の長期的不変性が確保されるとしています。

まとめ

  • 2019年にSI基本単位の再定義がされ、普遍的な定数に基づいた七つの定義定数による定義に改定されました。
  • すべての基本単位は定義値とされた物理定数に基づき定義されるようになりました。
  • 大きな変更は2つ
    1. 国際キログラム原器は廃止し、現行のキログラムの定義は廃止されました。
    2. 現行のアンペアの定義は廃止されました。

今回のSI基本単位の再定義により、人工物による物理量の定義が完全に廃止となりました。

やっさん

人工物による定義が完全に廃止となり、“いつの日か本物を見てみたい”と思いを馳せていたメートル原器、キログラム原器に対するロマンが、少しばかり薄れてしまいました😟

今回はここまでとさせて頂きます。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。